特集1 鬱の時代へ――失調と回復の哲学
抗不安薬、メンタルヘルス、燃え尽き症候群――
2020年代、その混沌と向き合う思想
世界で2.6 億人を超える患者数が推計され、現代に蔓延する「うつ病」。さらに昨年来の世界規模の感染症流行は停滞と孤立を人々にもたらし、自殺率や抗不安薬使用が増加しつつあります。一方、文化に目を向ければジェネレーションZのアーティストたちが向精神薬やメンタルヘルスについて繰り返し歌い、レトロなリメイク作品が亡霊のように回帰し、SNSのタイムラインは煽動とフェイクで埋め尽くされていく――。精神医療の現在からポピュラーカルチャー(映画、HIPHOP、ゲーム、漫画)を貫通する憂鬱まで、私たちの社会や文化が抱える疲弊や不安の現れを通して「21 世紀の時代精神」を問います。
INTERVIEW
北中 淳子
蔓延するうつ病と精神医療の現在
CRITIQUE
2020 年代ポップカルチャーと
メンタルヘルスの行方
柴 那典
INTERVIEW
斎藤 環
トラウマから遠く離れて ──うつ病とケア、その倫理のために
APPENDIX
鬱映画50
伊藤 元晴、山下 研、 横山 タスク、若林 良
ヒップホップと鬱
──ゲトー・ボーイズから
ケンドリック・ラマーまで

吉田 雅史
ゲームと「鬱」
──不可能性の経験
横山 タスク
CRITIQUE
終わるまではすべてが永遠
木澤 佐登志
物語は傷だらけのまま進む
──ジャンプ漫画の
「鬼ごっこ化」から考える成長と憂鬱
横山 宏介
『インサイド・ヘッド』から
『ミッドナイト・ゴスペル』へ
──「私」さえいなくなれば、
きっとこの苦しみも悲しみもなくなる
伊藤 元晴

特集2 ポストクリティークⅡ――来たるべき批評のために
批判理論の「次」を模索するポストクリティーク実践篇。
前号に掲載した特集ではブリュノ・ラトゥール、イヴ・セジウィックらの訳出論考などから、世界で巻き起こりつつあるポストクリティークの理論動向を紹介しました。続く本特集では実践的な論考を掲載、ポストクリティークの可能性を模索します。SNSの普及に伴い、動と対立が繰り返される現代の政治あるいはポピュリズムに対して「情動のデモクラシー」を掲げる宮﨑裕助、ポストトゥルース以降に失われた「フィクション」の可能性を村上春樹の作品群を通じて問う勝田悠紀の論考の他、現代日本の批評とポストクリティークの交差点を巡る大澤聡×杉田俊介の対談を収録。
CRITIQUE
情動の退隠
──フロイトと現代ポピュリズムの問い
宮﨑 裕助
距離、あるいはフィクションの
恥ずかしさについて
勝田 悠紀
INTERVIEW
大澤 聡×杉田 俊介
ポストクリティークと現代・日本・批評
SERIES
〈三体〉から見る現代中国の想像力 第三回
宇宙から遠く離れて―― 『三体Ⅲ:死神永生』について
楊 駿驍
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