interview: エイドリアン・コーカー「アーティスト/レーベルオーナーの語る実験音楽/映像のための音楽、そして英国文化産業の危機」


Brexitとパンデミック。イギリス文化産業の危機

――Brexitに関して思うところがあれば教えてください。何か生産的な話があれば。

 イギリスのクリエイティヴ産業は、今のところ混乱しているように見える。保守党は芸術よりも経済的貢献度の低い水産業を優先した。彼らがそれをしたのは、票獲得のため過去そうしてきたように、ナショナリズムや国境、海洋大国をアピールするためなのだが、それらはまったくの幻想だ。そして音楽や芸術は右翼のマスコミに人気がない。

  イギリスでは今、リベラル/インテリ、左翼の人々とBrexitに投票した人々の間で文化戦争が起きている。私にはなぜ人がBrexitに投票したのかよく理解できる。 私はBrexitに賛成ではないが、40年間の民営化と金融化の結果、特に産業と製造業があった地域の人々の生活を悪化させてしまった。そこは私の出身地域でもあるから理解できる。

  個人的なレベルでは、新しい輸入関税のためにヨーロッパへのレーベルの販売は1月に干上がり、今ではVinylを製造してもらうために、プレス工場のほとんどがヨーロッパにあるので、それは最大5ヶ月かかることがある。難しいね…。また、私はあまり演奏はしないけれど、ヨーロッパの国々に機材や楽器を持ち込む際の新しいビザの要件や税金について読んでいると、明らかに演奏者に深刻な影響を与えるだろうことがわかり、悲しい。

 我々は耐えなければならないが、個人的にはメジャーレーベル/出版社や音楽業界の独占プラットフォームの制御から離れた、新しいネットワークの可能性を期待している。

――COVID-19の影響について、例えば、演奏会場や演奏者への影響は?Cafe Otoのような実験的な音楽にとって重要な空間はどうでしょうか?

 全てが閉鎖されている。去年は政府が閉鎖するのが遅すぎて、開放するには早すぎた。 次に彼らはCOVIDに対する無力の言い訳として、Brexitを使うと思う。アーティストたちは、可能な限り助け合っている。彼らは、ロックダウンされている間に音楽を委託してリリースする「Takuroku」のリリースを行っていて、全てのお金の50%が直接アーティストに支払われている。昨年のBandcampの興隆は、アーティストへの直接支払いが可能になったことを意味している。

――イギリス政府はアーティストへの支援を十分に行っているのでしょうか? 

何もしてないね!

――アーティストの側から何か進展や動きがあったら教えてください。

ブロックチェーンを使った分散型音楽ネットワークが始まっているという話を聞く。Audialsと呼ばれるものが、ミュージシャンにとってより良い方向に向かっているかもしれないね。

Adrian Corker (C) Cristiano Diamanti