夢より深い覚醒を──五十嵐耕平論
犬ほど映画にとって不気味な存在はいない。 撮影現場でどれだけ人間が必死に物語を演じていようと、虚構を解さない犬にとってそこは日常と地続きの現実でしかない。その場にないはずのカメラを役者が見つめることは、映画では「第四…
犬ほど映画にとって不気味な存在はいない。 撮影現場でどれだけ人間が必死に物語を演じていようと、虚構を解さない犬にとってそこは日常と地続きの現実でしかない。その場にないはずのカメラを役者が見つめることは、映画では「第四…
子供は子供だった頃 腕をブラブラさせ 小川は川になれ 川は河になれ 水たまりは海になれ と思った 子供は子供だった頃 なにも考えず 癖もなにもなく あぐらをかいたり とびはねたり 小さな頭に 大きなつむじ カメラを向けて…
五十嵐耕平は、驚異的な映像作家である。だが、ハリウッド映画に見慣れた観客からすれば、もしかしたらその作品は「ほとんど何も起こっていない」ように見えるかもしれない。ダミアン・マニヴェルとの共同監督作である新作『泳ぎすぎた夜…
2017年、日本に現れた『わたしたちの家』という小さな映画の大きな可能性について考えるとき、参照すべき言葉がある。1992年生まれのそのまだ若い映画監督は自身の作品について「映画を見ている私たちも(スクリーンとは)別の…
清原惟による監督作品『わたしたちの家』(2017年、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻11期修了作品、配給:HEADZ)は、2017年PFFアワードグランプリ受賞、第68回ベルリン国際映画祭・フォーラム部門に正式出品な…
チリ、サンティアゴで昼間はウェイトレス、夜はナイトクラブのシンガーとして働くトランスジェンダーのマリーナは、歳の離れた恋人オルランドとその年の誕生日を祝う。彼はテキスタイルの会社を経営し、離婚した妻との間に成人した子ど…
香港旅行の予習としてウォン・カーウァイの映画を見返し、それが自分を香港に誘った大きな要因だったにもかかわらず、ほとんど役に立たないことに気づいて唖然としたことがある。いくら画面を見つめても、どういうわけか香港の街並みに…
ジェームズ・キャメロン監督『アバター』(2009年)で気風のいいヘリ・パイロットを演じたミシェル・ロドリゲスが今度は性転換で女性になった殺し屋を演じ、シガニー・ウィーバー演じるマッド・サイエンティストと対決すると聞けば…
「私はきっと忘れない、あの情熱の炎を」 ミア・ドーラン「夢みる道化」 「願い焦がれることが多くの人々を愚者にする」 オウィディウス『エロイード』 「青」の観念史――ロマンティック・ブルーを中心に 「青は魂…
もし「ジャームッシュ映画」というカテゴリーがあるならば、この映画は良い意味で、その裾野を広げたことになるだろう。2017年9月に日本公開を控えているこの映画は、伝説的ロックバンド・ストゥージズのドキュメンタリーである(…