ストゥージズ・ルネサンス——ジム・ジャームッシュ『ギミー・デンジャー』レビュー
もし「ジャームッシュ映画」というカテゴリーがあるならば、この映画は良い意味で、その裾野を広げたことになるだろう。2017年9月に日本公開を控えているこの映画は、伝説的ロックバンド・ストゥージズのドキュメンタリーである(…
もし「ジャームッシュ映画」というカテゴリーがあるならば、この映画は良い意味で、その裾野を広げたことになるだろう。2017年9月に日本公開を控えているこの映画は、伝説的ロックバンド・ストゥージズのドキュメンタリーである(…
詩人からわたしたちへと提供される世界のなかで生きることは、 なんと喜ばしいことだろう ガストン・バシュラール『夢想の詩学』 ジャームッシュは、その長いキャリアにおいて「土地」自体を主人公とし…
…私はアクティビストでもないし、政治的な映像作家でもありません。東北タイでどういったことが起こったかについては多くの研究者が記述しているので、私は同じ方法を取らないだけです。私が試みているのは「感覚(feeling)」そ…
食事をして映画でも見ようと思った。さっきダウンタウンで、 庇に『パルプ・フィクション』のタイトルを掲げている館を見かけた。 食指が動くのは、あれだけだった。 エドワード・バンカー『ドッグ・イート・ドッグ』(199…
「人は後ろ向きに未来へ入っていく」 ポール・ヴァレリー 「この世のものは後ろ向きに見るとき、はじめて真に見える」 バルタザール・グラシアン プレリュード:秘数「3」から円環の魔法へ この『ラ・ラ・ランド』という魔術的な…
アンジェイ・ワイダは「抵抗」の作家である。 これまでワイダを語る誰もが、それ以上の何かを言ったことはなかった。 あらためて考えてみよう。では、この作家はいったい何に「抵抗」していたというのか? 通説によれば、それは…
人はなぜ映画を見るのか。そこに映し出されている自分の片割れと出会うためである。その片割れは、ときとして人ならざる姿をとって我々の前にあらわれることがある。 映画『君の名は。』(2016年)が分裂して隕石と化した彗星核…
映画の誕生は、写真すら満足に普及していない19世紀末の世界において革新的な出来事だった。観客は迫りくる列車に恐れ慄き、後景に配された木々が風に揺れる様に釘付けとなった。克明に外界を記録する写真にもない「運動」そのものの…
先日のアカデミー賞について、記憶も鮮やかな人がまだまだ多いのではないだろうか。イニャリトゥが「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」に続き今年も「レヴェナント:蘇りし者」で十二賞の最多ノミネートを獲得したこ…
5時間17分の長さを誇る『ハッピーアワー』は、そのタイトルを裏切ることなく、まさしく幸福にみなぎった時間を提供してくれた。鑑賞前の緊張と不安から、劇場を出た時の外気の寒さや体内の熱気までが、鑑賞中の興奮を外側から包み込ん…