Interview: イ・オッキョン「アジア系女性インプロヴァイザーの到達した未踏の地」


ジャンルを超越するコラボレーション

――そしてあなたはクリスチャン・マークレー Christian Marclay〔4〕を始め、多くの著名なアーティストや音楽家と共演し始めます。

OL 2000年9月に完全にニューヨークに引っ越すと、幸運にも、一緒に演奏しないかと声をかけてくる多くの心の広い音楽家に出会いました。数ヶ月後には、トライベッカにあるKnitting FactoryでButch Morris〔5〕のConductionの演奏をしないかと誘われました。特別な音楽家であるButchは私と演奏したあと、Christian MarclayやVijay Iyer〔6〕といった偉大な音楽家たちを紹介してくれましたが、彼らは今でも私の親友であり共同作業者となっています

 当時のTonicは、演奏をするだけではなく、他の面白い音楽がどうなっているかチェックしにきたり、あるいは単に遊びにくるかで、基本的に皆が顔を出す所でした。そこには皆が繋がりたいという好奇心に溢れていて、大きなコミュニティーの一員としての確かな感覚があったのです。また皆が平等に扱われるカジュアルな雰囲気もありました。例えば、それから1年もしないうちに私はThurston Mooreと出会いましたが、私たちはお互いに名乗ることもありませんでした。私はといえば後ろの方で立っている背の高い男がいるなと思っていましたね。兄弟の1人がはまっていたことがありますが、Sonic Youthは特に私のバックグラウンドにはありませんでした。何気なく相槌を打ち合ったりして、何気ない会話をしたと思いますが特に正式な紹介などはありませんでした。少し経ってから、彼は私に演奏しないかと声をかけてきましたが、その時の共演は全くもって楽しい経験となりました。

 当時Tonicは私の生命線でした――。

――あなたは、音楽ジャンルの障壁がまるでないかのように、多くのコラボレーションをされ続けていますね。

OL 多くの異なった音楽分野に属する音楽家たちと出会うことができて幸運だなと思います。

 Vijay Iyerはもっとも親しい友人の1人です。表面的には彼の音楽は私のやっていることと全く異なるのですが、現時点で私は既に15年以上にわたって彼のプロジェクトに参加し続けています。同じ音楽言語を共有してはいなくても、私がやっていることやその感情的コンテクトを彼は理解してくれています。そして、それは非常に貴重で稀少なことなのです。

 SwansのMichael Gira〔7〕も非常にオープンであり寛大です。音楽的な強烈さという点において、私と似たアプローチをしていると感じます。Swansでツアーをしたとき、2時間以上演奏し続けているにも関わらず、私は毎夜聴き続けることができました。彼の声や言葉はかなり特別なもので記憶に残ります。

 そしてMark Fell〔8〕。表面上彼の音楽ほど私のものと違って聴こえるものはないです。けれども一緒に演奏する際、彼が注意深く構築する音響世界とその裏にあるロジックには真に引き込まれ、本当に意味あるものを創造するよう、深く飛び込みたいと思わせてくれます。また、チェロにはない、合成的なサウンドが好きです。

 Bill Orcutt〔9〕と演奏するとき、脳がねじれるように感じて、全く違う宇宙に投げ込まれるかのような感触を受けます。全くもって簡単なものではなりませんが、だからこそ好きだと言えます。私が出会った中でもっとも個性的な音楽家で、彼との演奏はたまりません。

 もう10年以上にわたって、作曲家のMarina Rosenfeld〔10〕とは共同作業しています。彼女の音楽は究極的に個性的でしかもフェミニンであって、本能的な反応を感じる、という以上のことを説明するのは困難です。彼女の曲を掘り下げることは、とてもやりがいがあって、豊饒な旅だと言えます。というのも、私の作り出すチェロの音をとてもよく理解してくれていて、それらをエキサイティングな音響的な可能性の扉を開く、違う次元へと持って行ってくれるのです。

――ではIkue Moriはどうでしょう?

OL 私の知っている中でもっともオリジナルで個性的な音楽家です。彼女は真のアーティストと断言できます。彼女のやること全てが、彼女が何者あるかを示している――例えば誰かが本物であるならば、その人は他人の評価を超えた範疇にある――そんな人です。もっと認められるべきだと思いますし、コンテンポラリー・ミュージックの中で特別の場所を占めています。

 音やヴィデオを作ったりするなどして、何かを作ることを愛していて、その全ての瞬間が彼女を示しています。その人だけの特別な世界に耽っている魔術的な人物のようで、行動を共にしなくとも、彼女の作品から、その世界の一端を垣間見ることが許される、そのような類の人です。彼女には何か真に格別なものがあります。

 また電子音楽の世界で長い間続けている数少ない女性アーティストの1人です。電子音楽の世界が男子の世界である現実を考慮するならば、彼女の作品がより上手い形で人目につけば良いなと思いますね。

――あなたはまた、ヴィデオ・アーティストや映像作家とよくコラボレーションされていますね。

OL 映像と直接的な音楽のコラボレーションでは、昨年Douglas Gordon〔11〕と仕事をしましたが、非常に楽しいものになりました。他のアーティスト達が私の録音を彼らの映画に使用することもありましたが、そこまで興味深いものはないようです。牧野貴〔12〕とはロッテルダム国際映画祭で昨年コラボレーションをしましたし、クリスチャン・マークレーとはヴィデオ作品でもまた他のヴィジュアル作品でも共演しましたね。スイス人のドラマーLuc Müllerと3人で今年何度か演奏しています。また、過去に音楽を作ってもいたイギリス映像アーティストHaroon Mirzaとも共演したことがあります。

――映画も多く観られているようですが、好きな韓国映画はありますか。

OL 残念ながら、韓国国外でも有名になっているにもかかわらず、それほど多くの韓国映画を観ていないですね。最近ではハリウッドとほとんど同じ規模の作品を製作していますが、それはつまりより商業的ということでもあります。私自身は良質のお涙頂戴もの自体は大好きなのですが、特定の反応へと観客を誘導し過ぎるものは全く好きではないですね。その中で、大好きというほどではないですが、ホン・サンス Hong Sang-Soo〔13〕はとても興味深い映画作家で評価に値します。また、アメリカで活動する韓国系アメリカ人映画作家のKogonadaによる『Columbus』という昨年公開された映画は、本当に美しいと思いました。

――好きな韓国のアーティストを挙げてください。

OL 韓国の国外で知られた人であれば、ナム・ジュン・パイク〔14〕の名を一例として挙げなくてはいけないでしょう。彼はまさに時代の先を行っていたし、テクノロジーとアート形式を非常に個人的なやり方で統合していましたね。彼のヴィデオ作品『Global Groove』(1973)

はほとんど音楽作品と言えるほど素晴らしいリズム感覚があり、初めて作品全体を見たときは私を驚嘆させました。彼は作品と作品の見せ方においてユーモアと挑発を交えていましたね。

 あとほとんど韓国内でのみ知られるアーティストには、シンガーソングライターのKim Kwang Seok〔15〕を挙げたいですね。バラード曲だけでなく、日常における様々な要素を描写した、とても美しい曲を書いています。また、Isang Yunはとてもシュールレアルな詩と短編小説を書いています。

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