カンタロープメロンが飲みたい私と上手く付き合う方法


 スターバックスコーヒーの新作、カンタロープメロン&クリームフラペチーノを飲んだ。この新作がレセプションでお披露目され、数々のモデルが試飲会に招待されているのをインスタグラムで横目に見て指を噛んでいた時から私のこのカンタロープメロンへの憧れは始まった。メロンなんて好きじゃないのに。そして実際に私は発売して一週間もたたないくらいでこの新作を飲んだ。700円近く払い、並んで買った。その日は暑くて、涼しい店内に人がひしめき合っていた。味は特別、素晴らしく美味しいわけでもなく、ただスッキリとした甘さが仕事で疲れていた私を潤した。それ以上に、仕事で疲弊した自分を少し、好きになれる味がした。きっと私はこれがタリーズでひっそりと販売された新作だったら飲まなかっただろう。数々の著名人やオシャレな人がインスタグラムに飲んだことを投稿していなかったら飲んでいなかったとも思う。ぼんやり、気付いてしまったことから目をそらした。

 私は700円で自己肯定感を買った。素敵なものに、それ相応の対価を払い、輝いている人たちと肩を並べるかのように仕事で疲れた身体にそのジュースを流し込む。その一連を買ったのだ。メロンになんて執着はない。味なんて最早わからないの。しかしそれは何も悪いことではないと思う。自分が自分を好きになれたのなら。700円で満たされる承認欲求にくらい、付き合ってあげようではないか。まだ若い私が、自分を許す小さな方法。

 

沼本奈々

 

(第22回文学フリマ東京にて無料配布致しましたミニコミ『ヱクリコ』に収録した文章を再掲しています。)


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