塗りつぶされた「抵抗」の肖像――アンジェイ・ワイダ『残像』レビュー
アンジェイ・ワイダは「抵抗」の作家である。 これまでワイダを語る誰もが、それ以上の何かを言ったことはなかった。 あらためて考えてみよう。では、この作家はいったい何に「抵抗」していたというのか? 通説によれば、それは…
アンジェイ・ワイダは「抵抗」の作家である。 これまでワイダを語る誰もが、それ以上の何かを言ったことはなかった。 あらためて考えてみよう。では、この作家はいったい何に「抵抗」していたというのか? 通説によれば、それは…
2017年1月に出版された、野中モモによる『デヴィッド・ボウイ —変幻するカルト・スター』は簡潔な筆致で、デヴィッド・ボウイにまつわる「出来事」を析出させています。ともすれば「わたしとデヴィッド・ボウイ」というような内…
いい作家はいつも同じ場所を、質と大きさの違う槌で叩く。音が変る。釘を大切にする。同じ槌ばかりだと結局釘の頭を潰すだけで少しも打込めない。ただうつろな音がするばかりだ。 ジャン・コクトー「職業の秘密」*1 「どう、十分硬く…
篠山紀信が好きだ🌺。キシンといえば、『オレレ・オララ』と『決闘写真論』である。古い作品ばかりでは、キシンが苦虫をかみつぶすので『KISHIN meets ART』(彫刻の森美術館)を挙げておく。最新作と…
文学でない、小説のために 文学や小説を語る行為、それ自体がすでにノスタルジーに類する時代。そんな自覚から、はじめなければならない。少なくとも、ここで話題にする小説家・松波太郎の最近作『月刊「小説」』(2016年)は、…
店のウェイターに食べ終わった皿を下げてもらうと、彼女はおもむろにパソコンを鞄から取り出し、テーブルの上で開いた。そして、淡々と自分の撮った写真作品を私に見せ始めた。 彼女は特に作品を解説するようなことはせず、ただ…
1.FGOについて 魔術だけでは見えない世界、科学だけでは計れない世界を観測し、人類の決定的な絶滅を防ぐために成立された人理継続保障機関・カルデア――そこでは100年後の未来まで人類史の安全を保証していたにもか…
人はなぜ映画を見るのか。そこに映し出されている自分の片割れと出会うためである。その片割れは、ときとして人ならざる姿をとって我々の前にあらわれることがある。 映画『君の名は。』(2016年)が分裂して隕石と化した彗星核…
トーマス・ルフの展示に行くと、「写真を見る」のでなく、「見る写真」に立ち会うという現象に出くわす。彼の作品は、写真のメディア性について言及するものばかりなので、トーマス・ルフという作家が、写真をどのように捉えているか、…
『トリスタンとイゾルデ』のおよそ60年後に作曲され、ワーグナーには見られない軽妙さを備えたリヒャルト・シュトラウスの『ナクソス島のアリアドネ』(以下『アリアドネ』)は、ややいびつな構成をしている。2部からなるこの作品、…