ポスト・ジャンル映画としてのA24フィルモグラフィ:『ヱクリヲ vol.10』「A24 インディペンデント映画スタジオの最先端」

A24のいくつかの作品には、明らかにジャンル映画の記憶を借りつつ、しかしそれでいてその範疇に収まらないものがある。ゾンビや怪物の襲来を思わせつつ、しかしそれはつねに予感に留まり続け、観客が思いもしない終着点にいたる。ある…

バーチャルYouTuberエンゲージメントの美学――配信のシステムとデザイン:『ヱクリヲ vol.10』「一〇年代ポピュラー文化」

はじめに ひとびとは、キャラクタに憧れ、引退するアイドルに涙し、配信者の言葉に反感を覚える。ひとびとはこれらの対象といかに関わっているのか、その関わりはどのように作り上げられているのか。これらの問いは、この関わりの一般性…

清水穣インタビュー メディウム・スペシフィシティの新しい幽霊 :『ヱクリヲvol. 9』「写真のメタモルフォーゼ」

 いま、私たちは誰も「写真とは何か」を口にすることができない。日々500億枚以上もアップロードされるSNS写真、プラットフォームに表示されるサイネージ広告やゲーム内写真専門のプロフォトグラファーの出現――。現在においては…

『シャイニング』のオカルト音響論――ケイト・マッキストン『また逢いましょう:スタンリー・キューブリック映画における音楽的意匠』(連載「音楽批評のアルシーヴ海外編」)

■本書の背景  ある監督のフィルモグラフィーを映画音楽/音響に絞って論じたものとしては、幻想文学研究者にしてクラシック音楽研究者であるジャック・サリヴァンの得難い『ヒッチコックの音楽』(イェール大学出版、2006)が既に…